ガウスはアルキメデス、ニュートンと並ぶ歴史上の偉大な数学者です。 幼い時から計算能力にすぐれ、「話し始める前にもう計算していた」 と言われています。実際、2才で既にに父の計算の間違いを指摘したと いうことです。10才のときには、等差級数の和を求める問題を即座に 解いて見せ、先生を驚かせたという逸話は有名です。そこで、先生はガウ スの才能にみあう最良の教科書を買って与え、代数の指導者として友人 のバーテルスを紹介しました。バーテルスは才能溢れるガウスをブルン シュバイク公爵に推薦し、高校・大学で勉強するのに必要な経済的援助 を引き出してくれたのでした。高校在学中にはニュートンの著書「プリンシピア」と出会って深く感動 し、ニュートンへの尊敬の念をいだきそれを一生胸の奥にあたため続け ました。また、現在実験データの解析などの基本的な手法として幅広く 応用されている「最小2乗法」をこの頃に発見しました。19才のとき、 正17角形を定規とコンパスだけで作図出来ることを発見し、それを機 に「数学者になろう」と決意しました。
ガウスの研究は当時の学界の研究を1世紀先んじていたと言われます。 厳格さを信条とするガウスは未発表の研究をたくさん残しました。幸いな ことに、1976年から1814年に至る数学日記が残されており、14 6の研究成果が明らかにされています(今なお、2つが未解明)。ガウス のモットーは「小数なれども熟したり」で、この言葉を自分のスタンプに も使っていました。まさに、その言葉通り実践していた訳です。
ガウスは、「あなたのような天才の秘密は何か?」と人から問われると、 「他の人でも私のように深く、絶えず数学的真理に没頭すれば、同様にな ることができるはずです。」と答えていました。ところで、ガウスの敬愛 するニュートンは「いつもそのことを思い続けていれば発見を成し遂げる ことができる。」と語っています。ガウスとニュートン、両者はその学問 的アクテイビテイーの深いところで互いに共鳴しあっているようです。
父について、ガウスは「一度も愛情を感じたことがない。」と述べていま す。一方、母については愛着をもっており、とくに母が死ぬ4年前に目が 見えなくなると、他人を寄せ付けずに自分で母の世話をしたほどでした。 またその母は、97才で死ぬまで息子を自慢していました。そのような母 子の絆の深さが、天才ガウスを育む土壌となっているように思われます。
「こどもはみんな天才」とよく言われます。こどもを慈しむおとなの立場 からの発言ですが、ある程度の実感を伴った言葉です。天才とそれを取り 巻く愛の構造との関連について考えることは、現代の子育て論、教育論に あらたな視点を提供してくれるかもしれません。