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: 電磁誘導と電磁力の同時利用 : 磁性の応用 : 電磁力の発生を利用   目次

マイクロ波の発生装置

図 3.2: 水分子の回転の原理
図 3.3: マグネトロンの原理
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\includegraphics[width=0.35\textwidth, clip]{magnetron.eps}
モーターやマイクロホンでは,電磁力で動かされるのは導線であった.この場合は,磁力線を横切って,導線の中を電流が流れたので,導線が動いたのである.導線がなくても,そこに電流が流れていると,つまり電子の流れがあるなら,その流れが動かされる.マグネトロンは,この原理に基づいてマイクロ波を発振させるものである.

マグネトロンは,レーダーの発振管などに利用されているが,身近なところでは,家庭用電子レンジに納められ,多くの家庭で活躍している.

電子レンジの中では火の気もないのに,ものが加熱されるが,これは波長の短いマイクロ波による誘導加熱に基づいている.すなわち,食べ物の中に必ず含まれる,酸素原子一個と水素原子二個からなる水分子が電波で躍らされ,その結果,熱が発生する.電子レンジでは,一秒間に二百万回以上も方向を変える電場が,マイクロ波によって水分子に作用し(図3.2),無数にある水分子が,互いにぶつかり合っている.

マイクロ波発生装置,マグネトロンの構造を簡単に説明しよう.図3.3に示すように,これは電気の陽極になる円筒と,その中心軸におかれた陰極とからできており,この軸に平行して磁場が加えられるようになっている.この磁場を作るのがフェライト磁石である.

磁場は,紙面を表から裏に貫く方向とする.陰極から電子が放出され,外周の筒状の陽極に向かうとき,電子は進行方向を右に曲げるような力を受ける.この曲げる力は,磁場が強くなるほど大きくなる.磁場を次第に強くしていくと,電子の流れも右へ向けての行き先変更が次第にひどくなる.磁場がある強さにまでなると,電子は陽極筒の内面をかすめるだけで,陽極に飛び込むことができず,陰極のほうに舞い戻る.磁場がさらに強くなると,電子は陰極の周囲を,特殊な曲線を描きながらぐるぐる回るようになる.この現象をうまく利用すると,マイクロ波の周波数で振動する電力が発生する.


Masashige Onoda 平成18年4月11日