: ジョセフソン効果
: 超伝導と遷移金属酸化物
: 第1種超伝導体
目次
超伝導体にかかる磁場が臨界磁場以上になると,超伝導状態が壊れて常伝導状態になるが,試料全体が同じ磁場を感ずるのは試料が円筒形で,軸に平行に磁場をかけた場合だけである.その他の形では,超伝導体が磁力線を押しのけるため,局部的に磁場の強い所ができる.すると磁場がある程度強くなると,臨界磁場以下でも局部的に臨界磁場を越す所ができ,そこでは常伝導状態になる.他の場所では,磁場はまだ臨界磁場を越さず,超伝導状態のままでいるから,試料は超伝導状態と常伝導状態と入り混じったものになるはずである.このような状態を中間状態という.
一様な磁場の中に置かれた球状の超伝導体を考える.が小さいうちは超伝導体から磁場が押し出されるため,表面における磁場は球の赤道上でいちばん大きくなる.超伝導体の表面では磁場の垂直成分がゼロであり,無限に遠くではになることを考慮して,磁場の方程式を解くと,表面における表面に平行な成分は
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(7.8.46) |
となる.および,すなわち北極と南極では
であるのに,
では
となりより大きい.したがって
では,赤道に沿った部分は常伝導状態になる.球の一部は常伝導状態になり,磁力線はそこを通って球を貫き,表面での磁場はどこでもを越えないような状態になる.
極端に薄い板状の試料に垂直に磁場をかけると,
の任意ので中間状態ができる.このときは板の中に超伝導の部分と常伝導の部分とが交互にでき,超伝導の部分では,常伝導の部分ではになっている.
超伝導状態と常伝導状態の境界を作るのに必要なエネルギー,いわゆる表面エネルギーを評価してみよう.いま,超伝導状態と常伝導状態との境界を考えると,常伝導状態では,磁場の強さはいつでもであり,それが超伝導状態にの程度入り込んでいる.したがって,磁場のエネルギーとして
程度の得をしている.一方,超伝導状態の電子は,距離の程度は互いに関連をもって運動しているから,超伝導状態は常伝導状態から距離の程度入り込んでから境界の影響を感じなくなる.超伝導状態では,単位体積あたり
の凝縮エネルギーだけ常伝導状態より低くなっているから,上のような境界では,
程度のエネルギーの損失がある.したがって,表面の単位面積あたり
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(7.8.47) |
程度のエネルギーが,表面を作るのに必要になる.第1種超伝導体ではであるから,は正であり,境界を作るのにエネルギーが必要になり,むやみに細かく超伝導と常伝導の層に分かれることはできない.これに反し第2種超伝導体ではであるから,は負になる.したがって境界面を作るとエネルギー的に得をすることになり,その磁気的性質は第1種超伝導体とかなり違ってくる.
Masashige Onoda
平成18年4月7日