next up previous contents
: 第2種超伝導体 : 超伝導と遷移金属酸化物 : 中間状態   目次

ジョセフソン効果

GL方程式で一つの超伝導体を記述するものは,秩序パラメーター$\Psi$であるが,二つの超伝導体の$\Psi$はどのように関係しているであろうか?二つの超伝導体が遠く離れていれば,その間には何の相互作用もないから,$\Psi$の間には何の関係もない.逆に一つの超伝導体を二つの部分に分けて考えると,この二つの部分の$\Psi$は密接に関係しているはずである.

それでは中間の場合,たとえば二つの超伝導体の間に,薄い絶縁体の層が入ったような場合はどうなるであろうか?絶縁体の厚さがコヒーレンス長より小さければ,両側の$\Psi$は連続的につながっているはずで,その間に超伝導電流が流れうる.この電流はトンネル電流とは本質的に違う.トンネル電流は片側が常伝導体であってもよく,電圧降下を伴っている常伝導電流であるのに対し,いまの電流は超伝導電流であり,絶縁層の両側で電圧降下を示さない.また磁場によって変化し,原則的にGL方程式に従う.この電流の可能性を最初に指摘したのがジョセフソンで,この現象をジョセフソン効果,このときに流れる電流をジョセフソン電流という.

GL方程式によると,外からの磁場がなく$\vert\Psi\vert$が一定のときは,電流は$\Psi$の位相$\phi$の変化から生ずる.

$\displaystyle \mbox{\bfseries\itshape {J}} \propto \nabla\phi.$     (7.9.48)

いま二つの接触した超伝導体a,bを考え,aからbまで上式を積分すると,a,b間を流れる電流は
$\displaystyle \mbox{\bfseries\itshape {J}} \propto (\phi_{\rm a} - \phi_{\rm b}),$     (7.9.49)

となる.量子力学的に考えると,二つの超伝導体a,bの間で,電子が絶縁体の層を飛び越えて行ったり来たりする確率ができ,そのため二つの超伝導体の波動関数$\Psi_{\rm a}$$\Psi_{\rm b}$が独立でなくなる.そして$\Psi_{\rm a}$$\Psi_{\rm b}$の位相によってエネルギーが変化するようになる.計算の結果は
$\displaystyle E = \Delta E_{0}{\rm cos}(\phi_{\rm a} - \phi_{\rm b}),$     (7.9.50)

となり,電流は
$\displaystyle J = J_{1}{\rm sin}(\phi_{\rm a} - \phi_{\rm b}),$     (7.9.51)

という形になる.

Masashige Onoda 平成18年4月7日