next up previous contents
: の決定 : 第2種超伝導体 : 第2種超伝導体   目次

磁気的性質

コヒーレンス長$\xi$が磁場侵入長$\lambda$より小さい第2種超伝導体は,$\xi > \lambda$である第1種超伝導体とは,その磁気的性質が違っている.磁場と電流との関係式は,第2種超伝導体ではロンドン方程式が成り立って,第1種超伝導体より簡単なようにみえるが,実際は第2種超伝導体の方がかなり複雑である.

第2種超伝導体の磁気的性質が複雑なことは,超伝導と常伝導の部分が接しているときの表面エネルギー$\Gamma$を考えてみるとわかる.$\Gamma$は(7.8.2)式によると

$\displaystyle \Gamma \simeq \frac{1}{8\pi}(\xi - \lambda)H_{\rm c}^{2},$     (7.10.52)

であるが,第2種超伝導体では$\xi < \lambda$であるから$\Gamma < 0$となり,超伝導体の中に常伝導の部分ができやすい.したがって熱力学的な臨界磁場$H_{\rm c}$より小さい磁場でも内部に常伝導の部分ができるようになり,その部分では磁場はゼロでなくなり,完全なマイスナ−効果は示さなくなる.逆に十分に強い磁場で常伝導状態にある第2種超伝導体で,磁場をだんだん弱くしていくと,常伝導の中に超伝導の部分ができやすいため$H_{\rm c}$より強い磁場で超伝導の部分ができ,その部分では磁場を外へ出し,またその部分を通る電流に対しては電気抵抗はなくなる.

円筒形の超伝導体を考え,軸に平行な磁場$H$をかけたときの,円筒内部の磁束密度$B$がどうなるかを考える.第1種超伝導体では,表面エネルギーが正であるため,$H = H_{\rm c}$に達するまでは$B = 0$で完全なマイスナ−効果を示し,$H_{\rm c}$以上では常伝導状態に戻って$B = H$になる.第2種超伝導体では表面エネルギーが負であるため,$H_{\rm c}$より小さい$H_{\rm c1}$で内部に常伝導の部分ができはじめ,磁場が内部に侵入しはじめ$B \ne 0$になる.$H_{\rm c1}$より磁場を強くしていくと,常伝導の部分がだんだん増えていって$B$も増大するが,$H$$H_{\rm c}$に達してもなお超伝導の部分が残り,$B$$H$より小さい.超伝導の部分が完全になくなるのは,$H_{\rm c}$より大きい$H_{\rm c2}$に達したときで,それ以降は$B = H$になる.

なお$H_{\rm c2}$以上の磁場で,試料の大部分は常伝導になっても,なお試料の表面の約1000 Åの厚さの層は超伝導状態にあり,表面を通る電流の電気抵抗はゼロになっている.この表面の超伝導状態のなくなる磁場を$H_{\rm c3}$と書く.$H_{\rm c3}$$H_{\rm c2}$の約1.69倍である.

以下ではこの第2種超伝導体の性質を,GL方程式を用いて説明する.


Masashige Onoda 平成18年4月7日