next up previous contents
: 酸化物高温超伝導体 : 超伝導と遷移金属酸化物 : 超伝導と遷移金属酸化物   目次

従来の酸化物超伝導体

図: perovskite ペロブスカイト(MTO$_{3}$)構造とspinel スピネル(MT$_{2}$O$_{4}$)構造
[]\includegraphics[width=0.45\textwidth]{perovskite.eps}          []\includegraphics[width=0.45\textwidth]{spinel.eps}
LiTi$_{2}$O$_{4}$あるいはBa(Pb$_{1-x}$Bi$_{x}$)O$_{3}$で代表される従来の酸化物超伝導体は,電子濃度が$10^{19}$$10^{21}$ [$e$/cm$^{3}$]で,金属間化合物超伝導体と比べて3桁近くも低く,しかもその$T_{\rm c}$が格子欠陥濃度や組成に著しく敏感である.一般に,低電子濃度超伝導休の$T_{\rm c}$は電子濃度とともに増加するので,酸素欠陥に起因する電子濃度の微妙な変化により$T_{\rm c}$が大きく変動するのだろう.ところでLiTi$_{2}$O$_{4}$スピネル型酸化物の一つであり,低温比熱などの測定からBCS理論で矛盾なく記述できる超伝導体であることがわかっている.一方ペロブスカイト型酸化物に属するSrTiO$_{3-x}$やBa(Pb$_{1-x}$Bi$_{x}$)O$_{3}$では,単一相の良質試料を作成することが困難なせいもあり,超伝導の起源などはまだ十分に理解されているとはいえない.ペロブスカイト型MTO$_{3}$とスピネル型MT$_{2}$O$_{4}$の結晶構造は,図7.8に示すように,遷移金属元素Tが6個の酸素原子のつくる八面体の中心を占め,その八面体がドナー元素Mによって結ばれていると考えることもできる.Ba(Pb$_{1-x}$Bi$_{x}$)O$_{3}$やLi$_{1+x}$Ti$_{2-x}$O$_4$では組成比$x$を変えてゆくと金属から絶縁体に転移し,その転移の起こる組成の近傍で,$T_{\rm c}$が最高値を示すことが知られている.

Masashige Onoda 平成18年4月7日