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: フラストレーション系超伝導と新物質探索 : 超伝導と遷移金属酸化物 : 従来の酸化物超伝導体   目次

酸化物高温超伝導体

図 7.9: 酸化物超伝導体発見後の臨界温度

\includegraphics[width=0.4\textwidth, clip]{fig12.eps}
1986年,IBMチューリッヒ研究所のべドノルツ(Bednorz)とミュラー(Müller)はZeitschrift für Physik B7.3という論文誌に,遷移金属酸化物La-Ba-Cu-O系の電気抵抗が30 [K]近傍から急激に減少することを報告した.その数か月後,ヒューストン大学のチユ−(Chu)らは,LaをYで置換したY-Ba-Cu-O系酸化物の$T_{\rm c}$ が液体窒素沸点77 [K]を超えることを発見した.77 [K]以上の$T_{\rm c}$を持つ超伝導体を使えば,電子デバイスや各種の電力用機器がそれまでの液体ヘリウムよりも安価で扱いやすい液体窒素によって使用可能となる.これによって酸化物超伝導体は一躍脚光を浴びることとなった.Y-Ba-Cu-O系酸化物は当初幾つかの化合物からなる混合相であったが,その後YBa$_{2}$Cu$_{3}$O$_{7-\delta}$$\delta$は酸素欠損量を表す)が超伝導物質であり,その$T_{\rm c}$は90 [K]であることが明らかになった.層状ペロブスカイト構造を基本とする酸化物超伝導体はその後も続々と発見されるとともに,$T_{\rm c}$の値は更新を続け,Bi-Sr-Ca-Cu-O系( $T_{\rm c} = 115$ [K]),Tl-Sr-Ca-Cu-O系( $T_{\rm c} = 125$ [K]),Hg-Ba-Ca-Cu-O系(圧力下 $T_{\rm c} = 157$ [K])などが発見された.代表的高温超伝導体YBa$_{2}$Cu$_{3}$O$_{7}$の結晶構造を図7.10(a)に,その酸素欠損型絶縁体YBa$_{2}$Cu$_{3}$O$_{6}$の構造を図7.10(b)に示す.ある結晶位置における酸素の有無により,一方は超伝導体であり他方は絶縁体である
図: ybco7 YBa$_{2}$Cu$_{3}$O$_{7}$構造とybco6 YBa$_{2}$Cu$_{3}$O$_{6}$構造
[]\includegraphics[width=0.15\textwidth]{yba2cu3o7.eps}                                                  []\includegraphics[width=0.15\textwidth]{yba2cu3o6.eps}


Masashige Onoda 平成18年4月7日