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: 反磁性体への磁場効果 : 磁性の基本的理論と実験 : 磁化の測定方法   目次

いろいろな磁性

磁性にはいろいろな種類がある.磁性があるとは,磁場の中においてやると何らかの反応を示すということで,その意味ではすべての物質に磁性はある.大雑把には,磁石に吸いつけられることがよくわかる物質と,非常に精密な実験をしてはじめてわかる物質に分けられる.前者を強磁性の物質,後者を弱磁性の物質と呼ぶ.

弱磁性物質の磁化の大きさは,強磁性物質のそれの数万分の一とか数千万分の一にしか当たらない.磁化の大きさは小さいが,磁石を近づければ,N極に近いところでS極が生じる弱磁性物質を,特に常磁性体と呼ぶ.図2.3に示すように,個々の原子の磁気モーメントが全体として相殺していないときには,その全磁化は,磁場に沿った向きをとろうとする.磁場がないときには,原子の磁気モーメントはあらゆる方向に一様に分布する.ある一個の原子に着目すれば,その磁気モーメントの向きは,乱雑な熱運動のために,時間とともに,絶え間なく移り変わる.こうして磁場がなければ,常磁性体の全磁化は平均としてゼロである.

図 2.3: 常磁性体の磁化の様子
\includegraphics[width=120mm, clip]{joujisei.eps}

磁場が加わると,各原子の磁気モーメントを磁場の方向に揃えようとする力が作用する.この磁場の配向作用と,熱運動の配向を妨げようとする作用が競合する過程の結果として,磁気モーメントは全体として磁場の方向に少し偏った方向をとるようになる.これにより,物質は磁場方向に磁化される.磁場が強くなれば,より多くの磁気モーメントが磁場方向に配向し,物質の磁化が増す.磁場が十分に強くなると原子の磁気モーメントはすべて磁場の向きに揃ってしまい,それ以上磁場を強くしても,状態は変化しない.常磁性体の仲間は,酸素,ナトリウム,アルミニウム,白金,$\cdots$,など多数ある.

弱磁性体には,常磁性体のほかに反磁性体という物質も含まれる.これは磁石を近づけると,反発するという性質を持つ.この現象は,1831年にファラデーが発見した電磁誘導現象に起因している.電磁誘導の法則によれば閉じた導線を貫く磁場が変化するときには,導線に必ず電流が誘起される.レンツ(Lentz)は,この誘導電流の現れ方を解析して一つの法則にまとめた.これによれば,誘導電流は,常にそれを誘起する原因に逆らう向きに生じる.たとえば,コイルに上側から永久磁石のN極を近づける場合,コイルにはそれを妨げる力が生じるような向きに,すなわちコイルの上側をN極とするような向きに,誘導電流が流れる.一方,磁石を遠ざける場合には,コイルの上側をS極とし,磁石が遠ざかるのを妨げる引力が働くような向きに,誘導電流が流れる.反磁性体の磁化の大きさは特に小さい.ヘリウム,金,銀,銅などが例として挙げられる.




Masashige Onoda 平成18年4月11日