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: 強磁性と電子の軌道 : いろいろな磁性 : いろいろな磁性   目次

反磁性体への磁場効果

図 2.4: (a) 勾配磁場(実線)および(b) 勾配磁場下での水面分布(破線)の概念図
r0.35
\includegraphics[width=0.35\textwidth, clip]{koubai.eps}
水,プラスチック片や木片など小さな寸法を持つ多くの反磁性物質の,27 [T]程度の超伝導磁石による浮上現象が1991年に報告された.その後,生物に対する磁場効果2.6の観点から水への磁場効果に興味が持たれ,いわゆるモーゼ効果が確かめられた.モーゼ効果とは,水平型磁石の中で水槽中の水面が割れたり,硫酸銅水溶液の液面が盛り上がったりする様をたとえている2.7.反磁性物質への磁場効果は非常に小さいが,磁場の強さを大きくしていけば,すなわち磁場によるポテンシャルエネルギーが重力ポテンシャルエネルギーに匹敵するようになれば,当然その効果は簡単に観測される.

2.4のような勾配磁場$H$のもとで,$h$のような水面の分布ができているとすると,点Aと点Bとでは両ポテンシャルの和は一定であるはずであるから,

$\displaystyle E = - {1 \over{2}}\chi B(x)^{2} + \rho gh(x) = {\rm constant},$     (2.3.19)

となる.ここで$\chi $は液体の体積帯磁率,$B$($x$)は磁場,$\rho$は液体の密度,$g$は重力加速度,$h$($x$)は水平位置$x$における液面の高さを表す.液体が一様であれば,液面の高さは,
$\displaystyle h(x) - h(x') = {\chi \over{2\rho g}} \left [ B(x)^{2} - B(x')^{2} \right ],$     (2.3.20)

となる.$g = 9.8$ [m s$^{-2}$],水に関しては, $\chi = -7.187 \times 10^{-7}$ [emu g$^{-1}$],$\rho = 1$ [g cm$^{-3}$]であるから,磁場の強さが10 [T]と0 [T]の位置における高さの差は,
$\displaystyle \Delta h = {7.187 \times 10^{-7} \over{2 \times 980}} \times (10 \times 10^{4})^{2} = 3.66\ [{\rm cm}],$     (2.3.21)

となり,実験結果とよく一致する.

Masashige Onoda 平成18年4月11日