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オームの法則

2.2に示すように,導線上の二点間の電位差を $\phi_{1} - \phi_{2}$( $\phi_{1} > \phi_{2}$)としたとき,その二点間に流れる電流の強さ$I$は電位差に比例する.この比例定数を$R$とおけば,
$\displaystyle I
=
{\phi_{1} - \phi_{2} \over{R}},$     (2.2.5)

図 2.2: オームの法則
\includegraphics[scale=1, clip]{fig-2-2-1.eps}
と与えられる.これを「オームの法則」という.$R$電気抵抗といい,それは実験によると導線の二点間の長さ$l$に比例し,その断面積$S$に反比例する.すなわち,
$\displaystyle R
=
\rho{ l \over{S}},$     (2.2.6)

と表される.$\rho $抵抗率とよび,導線の形や長さに関係しない.$\rho $の逆数 $\sigma = \frac{1}{\rho}$電気伝導度という.電気抵抗の単位は,1 [$\Omega$(オーム)] = 1 [VA$^{-1}$]で表される.

(2.2.1)の法則を近接作用の立場に適合した形式に書き直そう.

図 2.3: 近接作用の立場に立ったオームの法則
\includegraphics[scale=1, clip]{fig-2-2-2.eps}
2.3のような断面積$\Delta S$,長さ$\Delta x$の微小な円筒を考え,その全電気抵抗を$\Delta R$とおく.円筒の底面の電位を $\phi + \Delta\phi$,上面の電位を$\phi$とすると,円筒導体内の電流$I$は下から上へ流れる.すなわち電位の上昇方向と,電流の方向は反対向きであるから,
$\displaystyle -\Delta \phi
=
I \Delta R,$     (2.2.7)

となる.電流密度を$i$とすると,$I$ = $i\Delta S$,また(2.2.2)より, $\Delta R = \frac{1}{\sigma}\frac{\Delta x}{\Delta S}$であるので,
$\displaystyle i
=
-\sigma {\Delta \phi \over{\Delta x}},$     (2.2.8)

と表される.これをベクトル形式で書き直すと,
$\displaystyle \mbox{\boldmath$i$}(\mbox{\boldmath$r$})
=
-\sigma {\rm grad}\ \phi(\mbox{\boldmath$r$}),$     (2.2.9)

となる.導体内に電位差のある場合も,電場は,
$\displaystyle \mbox{\boldmath$E$}(\mbox{\boldmath$r$})
=
-{\rm grad}\ \phi(\mbox{\boldmath$r$}),$     (2.2.10)

と表されるので,
$\displaystyle \mbox{\boldmath$i$}(\mbox{\boldmath$r$})
=
\sigma \mbox{\boldmath$E$}(\mbox{\boldmath$r$}),$     (2.2.11)

となる.

静電的現象においては,帯電した導体の電荷は常にその表面上に分布している.その意味で,電荷の流れが電流であるならば,その電流は導体の表面上を流れるのではないか?と考えてしまうかもしれない.しかし,このときは電気抵抗が導線の半径に反比例するはずで,「電気抵抗は導線の断面積に反比例し,電流は導体の内部を流れている」という実験結果と一致しない.

導体内の電子の運動の様子を調べることによって,オームの法則を導こう.電子の質量を$m$,電荷を$e$とすると,電子の運動方程式は,

$\displaystyle m{d \mbox{\boldmath$v$} \over{dt}}
=
e \mbox{\boldmath$E$} - {m \over{\tau}} \mbox{\boldmath$v$},$     (2.2.12)

で与えられる.$E$は導体内の電場,第2項は導体を構成する原子との衝突を表し,$\tau$は緩和時間である.加速力と減速力が釣り合ったとき,電子の運動は定常的になる.このとき,
$\displaystyle \mbox{\boldmath$v$}
=
\left ( {e \tau \over{m}} \right ) \mbox{\boldmath$E$},$      

が成立する.導体の単位体積中の自由電子数を$N$とおくと,単位時間当り,単位面積の断面を通過する電荷量は$Ne$$v$で与えられるので,電流密度は,
$\displaystyle \mbox{\boldmath$i$}
=
Ne\mbox{\boldmath$v$}
=
{Ne^{2}\tau \over{m}}\mbox{\boldmath$E$},$     (2.2.13)

となる.(2.2.7)式と(2.2.9)式より
$\displaystyle \sigma
=
{Ne^{2}\tau \over{m}},$     (2.2.14)

を得る.
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Masashige Onoda 平成18年4月15日