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磁気的現象と電気的現象

鉄片を先端につけた杖が地面に吸いつけられたことから,クレタ島の羊飼いが磁鉄鉱(Fe$_{3}$O$_{4}$;各種火成岩・変成岩の副成分として含まれている)を発見した,と云われている.磁石を意味するマグネットという言葉は,磁鉄鉱の産地であるマグネシアという地名に由来している.

磁石の示す指向性は東洋で発見され,磁石の磁極間には引力だけでなく斥力も働くことが13世紀に発見された.地磁気の研究は,航海における磁針の必要性から盛んに行われるようになったが,磁気が精密に研究されはじめたのは1600年頃であった.ギルバートは,地球が巨大な磁石であると考え,球状の磁石を作ってこの考えを確めた.また,磁石の引力と電気の引力の相違点として,「天然の磁石が鉄を吸い付けるのは自然のままで存在する性質であるのに対して,電気的性質は摩擦によって発生する」,「磁石は鉄のような特別の物質だけを吸い付けるのに対して,電気的性質は軽い物体であれば何でも吸い付ける」,さらに「磁石の場合には,その磁極の磁荷を単独に分離することはできない」といったことを指摘した.その後,磁石の両端の磁荷の間に作用する力は,電荷の場合と同じく,距離の二乗に反比例することがクーロンによって確められた.

電気的現象と磁気的現象との間の関連が,エルステッドによって指摘された.彼は,学生に対して講義実験をしているときに,たまたま電流の流れる導線のそばに置かれていた磁針が動くことを発見したのである:図3.1に示すように,南北方向を向いている小磁針の上に,それに平行に導線を置く.電流を南から北へ流したとき,磁針のNは西の方へ,Sは東の方に回転した.導線を東西の方向に移動しても,磁針への作用の大きさは変わるが,その回転の方向は変わらない.このエルステッドの発見に続いて,アンペールは電流間に作用する力の研究を行い,平行電流間には引力が,反平行電流間には斥力が働くことを示し,電流間の力が静電気的な力とは別種のものであることを明らかにした.アンペールは電流間に作用する力を,遠隔作用としての中心力を仮定することにより説明しようと努力した.

図 3.1: エルステッドの発見
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Masashige Onoda 平成18年4月15日