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: 磁石のもつ基本的性質 : 磁性研究の歴史 : 磁性研究の歴史   目次

磁性の発生と発展

鉄を吸いつける奇妙な石 -- 磁石 -- は大昔から知られており,誰が発見者であるかは明らかでない.マグネットという言葉は磁鉄鉱を産出した中央アジアの地名に由来すると言われている.磁鉄鉱は,31 [%]のFeOと60 [%]のFe$_{2}$O$_{3}$からなり,そのうち鉄が72.4 [%]を占める.離れたものを引き寄せる力,しかも木片や銅板などを間に置いても鉄を吸着する磁気の力は,昔の人にとって驚異のまとであったにちがいない.そのようなことから磁石にまつわる様々な迷信や俗説が生まれた.古代ギリシャの科学者は,磁気の力が超経験的なもの,神によるものと見なし,特に,アリストテレスは磁石に霊魂が宿ると考えた.

中国では三千年以上も前に,磁針が南北を指すという性質が日常的に使われていたらしい.この現象は,後に方位コンパスとして航海に使われるようになった.磁石をはじめて本格的に研究したのは,イギリスのエリザベス一世の侍医であったギルバート(Gilbert)であった.彼は,日本でいえば関ケ原の戦いの頃に,磁石に関する著書de Magneteを出し,その中で,磁石を取り巻く迷信めいたことが,いくつも間違っていると指摘した.


Masashige Onoda 平成18年4月11日