図4.19(b)は,コーヒー豆の品質とラジカル濃度との相関を調べたもので,単にESR信号の絶対強度を取るのではなく,人為的な線照射で増大する信号強度から得た「等価線量(ED)」との相関を調べている.図から明らかなように,高品質のコーヒー豆ではEDが少なく,全脂肪に対する過酸化脂肪ラジカルの濃度が少ない.この他,茶の葉の品質とラジカル濃度の相関研究もなされている.
穀物については,年代測定にまでは至らないが,プレインカ(2000年前)のポップコーンと現在のポップコーンのESRスペクトルの比較研究がある.過去の温度,熱処理を調べようとする研究もあり,考古料学へのESR応用は今後急速に発展すると考えられる.
対象物内でラジカルが生成されるのであれば,それを利用することにより,歴史学,法医学等,様々な分野へのESR応用が可能となる.