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ポテトチップス

過酸化脂肪ラジカルの生成によるポテトチップの年代測定では,室温のままでもESR信号強度は増大する.ここでは,前節で述べた温度上昇というタイムマシンを利用したESR年代測定法を実証するために,信号強度の温度依存性実験の結果を示す.

4.17はポテトチップスと紙のESRスペクトルである.このような複合物質では数種のラジカルが存在すると考えられるが,その主なものは不飽和脂肪酸の二重結合部分に酸素が付加して生じる過酸化脂肪ラジカルであり,$g = 2.0055$に線幅0.5 [mT]の信号を示す.

図 4.18: ポテトチップスの過酸化脂肪ラジカルESR信号強度の増大の温度依存性.
\includegraphics[height=120mm,angle=90]{f10-4r.eps}

ポテトチップスのESR信号強度が,種々の温度でどのように増大するかを図4.18で示した.種々の温度での信号強度の増大を追跡している間にも,室温でのESR信号強度は増大していくので,(4.5.10)式で単純に年代を求めることは難しいが,活性化エネルギーの推定はできる.室温が変動した場合の年代値の評価では,このような温度依存性の実験が欠かせない.


Masashige Onoda 平成18年4月11日