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: 磁束線の運動 : 第2種超伝導体 : 付近における振舞い   目次

混合状態

外からかける磁場がだんだん強くなると,上に述べたような磁束線の数が増え,2本の線の間隔が小さくなるため,その間の相互作用を考えなければならなくなる.2本の磁束線の間の距離が$\lambda$の程度になると,一方の磁束線のまわりを流れる電流が,他の磁束線の中心近くにまで広がり,そのために磁束線に力を及ぼす.逆に第2の磁束線は第1の磁束線に力を及ぼし,2本の磁束線の間に相互作用が生ずる.この力は,2本の磁束線の向きが同じときは反発力で,反対向きのときは引力であることが計算によってわかっている.

この相互作用のため,磁束線が単位面積あたり$n$本できたときのエネルギーは,$n$に1次の項の他に$n^{2}$に比例する項が付け加わる.すなわち,(7.10.18),(7.10.19)式を用いると,

$\displaystyle E = - \frac{\varphi_{0}}{4\pi}(H - H_{\rm c1})n + \frac{1}{2}Un^{2},$     (7.10.72)

となる.$U$が相互作用のためのエネルギーで,すべての磁束線は同じ向きにあるから,$U > 0$である.(7.10.21)式を最小にするように$n$を決めると,
$\displaystyle n = \frac{\varphi_{0}}{4\pi}\frac{H - H_{\rm c1}}{U},$     (7.10.73)

となり,$n$ $H - H_{\rm c1}$に比例して増大することがわかる.

$H$$H_{\rm c1}$よりかなり大きくなると,磁束線は互いの反発力のため規則正しく並ぶようになる.すなわち,磁束線は正三角形状に並んだ三角格子を作る.これをアブリコソフ構造と呼ぶ.

さらに磁場が強くなると,磁束線の間隔はどんどん小さくなり,ついにはコヒーレンス長の程度になる.このときは磁場は一つの磁束線から隣の磁束線に移る間に僅かに変化するだけで,ほとんど一定になる.さらに磁場を強くすると,オーダーパラメーターが全体的に小さくなり,ついには至る所でゼロになる.これが$H_{\rm c2}$である.


Masashige Onoda 平成18年4月7日