: 第10回演習問題
: 電流と磁場
: 定常電流間に作用する力
ビオとサバールの法則(3.4.3)式は,線状の導線回路
に定常電流
が流れているときに,場所
につくられる静磁場を与える.導線回路の太さが無視できない場合には,(3.4.3)式を,
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(3.6.15) |
のように一般化する.ここで
(
)は電流密度を表し,積分範囲は電流密度の存在する領域全体にわたる.しかしこの積分は複雑で,これを解析的に実行できるのは限られた場合だけである.そこで(3.6.1)式を,
と変形する.
(
)をベクトルポテンシャルという.
上の証明を行ってみよう.(3.6.2)式,(3.6.3)式から出発して
(
)を計算すると,
となり,これは確かに(3.6.1)式の
成分に対応する.
さてベクトル解析の公式によると,一般に,
が成り立つ.なぜなら,
であるからである.この関係を用いると,(3.6.3)式より,
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(3.6.18) |
となる.これは磁場に関するガウスの法則で,磁荷密度というものが存在しないことを示している.すなわち,
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(3.6.19) |
を意味する.これが静磁場における積分形のガウスの法則である.
次に(3.6.2)式の回転を計算してみよう.再びベクトル解析の公式から,
が成り立つ.なぜなら,rot rot
(
)の
成分は,
であるからである.(3.6.2),(3.6.3)式を上の関係に代入すると,
を得る.(3.6.6)式の右辺の第1項には,
の形が出てくる.ここで,この右辺の第1項は,
となるので3.2,
を得る.こうして,
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(3.6.21) |
となる.ここで最後の式変形にはポアッソン方程式(1.5.6)式および静電ポテンシャル(1.4.16)式を利用した.(3.6.7)式を微分形のアンペールの法則という.
今,定常電流を囲む閉曲線
を考え,この閉曲線によって囲まれる任意の曲面
上で(3.6.7)式の面積分を行ってみると,
となる.ここで曲面
を通過する全電流の強さを
とした.さらに,
であるので,
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(3.6.22) |
が導かれる.もし閉曲線が電流を囲まないときは,
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(3.6.23) |
である.(3.6.8)式および(3.6.9)式が積分形のアンペールの法則である.
: 第10回演習問題
: 電流と磁場
: 定常電流間に作用する力
Masashige Onoda
平成18年4月15日