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磁場分布測定

磁場分布はホール素子を用いたガウスメーターで測定する.ホール素子は壊れやすいので特に注意して取り扱うようにする.

ホール素子とは,ローレンツ力によるホール(Hall)効果を利用した磁場測定用の素子である.ホール効果実験は図9のように行われる. 電場$E_{x}$$x$方向に伸びた伝導体にかかり,電流密度$i_{x}$が流れている.磁場 $\mbox{\bfseries\itshape {H}}$は正の$z$方向にかかっている.このときローレンツ力 $\mbox{\bfseries\itshape {F}} = - \frac{e}{c}\mbox{\bfseries\itshape {v}}\times\mbox{\bfseries\itshape {H}}$が働く.このために電子は負の$y$方向に偏る.電子がそこにたまるにつれて,電子の運動とその蓄積を妨げるように$y$方向に電場ができる.平衡状態では,横電場$E_{y}$はローレンツ力とつり合い,電流は$x$方向にのみ流れる.すなわち$E_{y}$は磁場$H$と電流$i_{x}$に比例する.ここで

$\displaystyle R_{\rm H}
=
{E_{y} \over{i_{x}H}},$     (2.13)

図 9: ホール効果測定法
r0.45
\includegraphics[width=0.4\textwidth, clip]{figure5.eps}
で定義される量をホール係数と呼ぶ.$R_{\rm H}$の符号により電荷の符号を決めることができる.

もう少し詳しく見てみよう.任意の成分$E_{x}$$E_{y}$を持つ電場と,$z$軸に沿った磁場 $\mbox{\bfseries\itshape {H}}$とがかかっている場合の電流密度$i_{x}$$i_{y}$を求める.電子1個当りの運動方程式は,

$\displaystyle m{{\rm d}\mbox{\bfseries\itshape {v}} \over{{\rm d}t}}
=
-e \left...
...\bfseries\itshape {H}} \right ) - {m \over{\tau}} \mbox{\bfseries\itshape {v}},$     (2.14)

となる.ここで$m$は電子の質量,$\tau$は緩和時間を表す.定常状態では,
$\displaystyle -e \left ( E_{x} + \frac{1}{c}v_{y}H \right ) - {m \over{\tau}} v_{x}
=
0,$     (2.15)


$\displaystyle -e \left ( E_{y} - \frac{1}{c}v_{x}H \right ) - {m \over{\tau}} v_{y}
=
0.$     (2.16)

単位体積中の自由電子数を$N$とし,上式の両辺に$Ne\tau/m$をかけ, $Ne^{2}\tau/m \equiv \sigma_{0}$ $-Nev_{x} = i_{x}$という関係を用いると,
$\displaystyle \sigma_{0}E_{x}
=
{eH \over{mc}} \tau i_{y} + i_{x},$     (2.17)


$\displaystyle \sigma_{0}E_{y}
=
-{eH \over{mc}} \tau i_{x} + i_{y}.$     (2.18)

ここで横電流$i_{y} = 0$とおけば,
$\displaystyle E_{y}
=
-{eH\tau \over{mc\sigma_{0}}} i_{x},$     (2.19)


$\displaystyle R_{\rm H}
=
{E_{y} \over{i_{x}H}}
=
-{1 \over{Nec}}.$     (2.20)

今の場合は,$R_{\rm H}$を既知とし,測定系の定電流値と測定電圧値をもとに磁場を求めている.
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Masashige Onoda 平成18年4月7日