: 種々の磁化曲線I
: 磁気測定の原理
: 測定方法
目次
自動システムの概要
自動測定にはGP-IBとRS-232Cという通信規格がよく使われる.どちらもコントローラ(PC)と測定機器とは双方向的に接続されるが,前者においてコントローラは各機器を個別につけられたアドレスで識別しデータはパラレルに伝送されるのに対し,後者においてはコントローラは各機器と1対1で結ばれデータはシリアルに伝送される.それぞれ一長一短があるが,ここでは励磁電源プログラマ(アドレス1)とマルチメータ(アドレス2)はGP-IBで,ガウスメータ,電子天秤,温度制御器はRS-232Cで接続されている.
- 励磁電流測定
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分流器を使ってマルチメータは電流を1 [A]につき1 [mV]の電圧として読みとる.
- 磁場測定
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ホール効果を利用したデジタルガウスメータを使う.
- 温度制御
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物性においては温度が重要な役割を持つが,温度の測定には普通熱電効果が利用される.2種類の金属線をループ状につなぎ,2つの接続点に温度差を与えると起電力を生ずる.起電力は金属の種類と2点の温度の関数なので,一方の温度を基準として固定し他方の温度と起電力との関係を予め校正しておけば,起電力から温度を読み取ることができる.ここでは液体窒素温度から数百度の範囲でよく使われる銅コンスタンタン熱電対を使う.また基準温度として室温が使われているが,その変動の影響を受けないように温度制御器には温度補償器が内蔵されている.自動制御にはPID制御がよく使われる.制御器の出力は現在値と設定値との偏差に比例する成分の他に,急激な外乱に対応するため偏差の微分の成分と,長期的ずれをなくすため偏差の積分の成分とからなる.温度制御器は設定温度と熱電対で測定された試料の温度とを比較し適切な電力をヒータに加え,設定温度に到達後は試料を一定温度に保つ.対象の熱特性に最適なPID定数を予め設定しておく必要があるが,その値はオートチューニング動作により決定される.
- 自動測定プログラム
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プログラム言語としてVisual Basicが使われている.Basicは初心者向けのプログラム開発言語で,インタープリタによりコンパイルと実行を行いながらプログラムをつくることができる.最近のアプリケーションソフトの多くにおいて,ユーザによる入出力は画面(GUI)を通して行われるが,プログラミングにおける画面の作成の労力を軽減するようにしたものがVisual Basicで,ボタンやテキストボックスなどいろいろな部品(オブジェクト)が用意され,その属性(プロパティ)や動作(メッソド)が決っている.それぞれのオブジェクトに何らかの変化や操作(イベント)があったときの処理をメッソドを使ってコードとして書いたもの(イベントプロシージャ)を次々と繋ぎ合わせてプログラムを完成させるようになっている.励磁電源は外部制御端子に約10Vを入力したときバーニアダイヤルで設定された電流を出力する.プログラマの分解能は10V/2000で,プログラムを実行時は1ステップで10V/2000ずつ制御電圧が変化する.
- 注意
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- プログラムを実行しているときはハード的な保護装置のいくつかが外された状態にあり,トラブルが発生したときはソフト的に解決しようとすると装置を壊すおそれがあるので,ハード的に安全策を施してからトラブルを解決すること.特に電磁石には大きな電流が流れているので,電流,電圧制御ダイアルをゼロにしてから問題を解決すること.
- 励磁電源を定電流電源として使うときは回路が閉じている(切換スイッチは中立でなく順方向か逆方向になっている)ことを確認すること.
- 電磁石に冷却水が流れていることを時々確認すること.
Masashige Onoda
平成18年4月7日