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: 電気抵抗測定 : 実験方法 : 試料合成

粉末X線回折

作成されたYBa$_{2}$Cu$_{3}$O$_{7}$およびYBa$_{2}$Cu$_{3}$O$_{6}$に対して室温で粉末X線回折を行い,試料・不純物の同定,格子定数の決定を行う.装置は理学ガイガーフレックスX線発生装置RAD IICシステムで,その概念図を図15に示す.
図 15: 粉末X線回折装置
\includegraphics[width=0.7\textwidth]{X-ray_e2.eps}

X線は,陰極のタングステンフィラメントを加熱することにより生じる熱電子を加速し,銅の対陰極に衝突させて発生させる.X線はCu K$\alpha_{1}$線( $\lambda =1.54056$ [Å])が主であるが,その他にCu K$\alpha_{2}$線( $\lambda = 1.54433$ [Å])とCu K$\beta$線( $\lambda = 1.39217$ [Å])も放出する.そこでCu K$\beta$線に対してはNiフィルターで遮断をし,Cu K$\alpha_{2}$線に対してはCu K$\alpha_{1}$線との放出比が知られているので,それをもとに回折パターンを解析しCu K$\alpha_{1}$線のみの回折パターンを得る.

X線回折は $\theta-2\theta$法により行う.この方法は細かい粉末状にした試料を付けたガラス板を$\theta$,回折されたX線の強度を測る計数管(NaIシンチレーター)を$2\theta$で回転させて結晶回折を測定する方法である.粉末状の試料は微結晶の集まりであり,結晶の配向性が無い限り,それぞれの微結晶面はランダムな方向を向いていると考えられる.結晶面間隔$d$の面は,波長$\lambda$のX線がその面に対してブラッグの反射条件

$\displaystyle 2d\sin\theta = \lambda$     (3.4)

を満たす$\theta$方向から入射して来た時のみX線を反射する.結晶がランダムな方向を向いていることから,ある領域の$2\theta$に対してX線の反射強度を測定することで式(3.3)を満たす結晶中のすべての面間隔$d$に対応する反射を得ることができる.

今回の測定では,$2\theta$について10 [deg]から70 [deg]の範囲を1 [deg min$^{-1}$]の速さで0.02 [deg]おきに計数管を回転させることで回折パターンを得る.
※X線回折装置は繊細な光路調整を行っているため,試料の取り付けには細心の注意を払うこと.
※YBa$_{2}$Cu$_{3}$O$_{7-\delta }$,YBa$_{2}$Cu$_{3}$O$_{6}$から各1名が$2\theta = 10$〜70 [deg]の測定を行い,それ以外の参加者は$2\theta = 25$〜45 [deg]の範囲で測定を行う.


Masashige Onoda 平成18年4月11日