一様な棒を引っ張るときには,棒の中の応力は一様であるが,力を加えられた物体の中の応力は,一般には一様ではない.図6.2のように,境界面として小さい面積を考え,それを通して隣りの部分からはたらく力を
とおこう.このとき,
![]() |
(6.1.1) |
の法線成分
に対して,
0の極限をとった
を法線応力(または垂直応力)という.
が正の場合には張力,負の場合には圧力ともいう.一方,
の接線成分
に対して,
0の極限をとった
を接線応力(またはせん断応力)という.
図6.3のように,原点Oを通る直交座標軸,
,
上に3点A,B,Cをとった微小な四面体OABCを物体中に考えてみる.
ABCの面積を
,法線
の方向余弦を
,
,
とおくと,
OBC,
OCA,
OABの面積はそれぞれ
,
,
になる.
OBC,
OCA,
OAB,
ABCの各面に関する応力ベクトルをそれぞれ
,
,
,
とおく.これらのベクトルの各成分は,(
,
,
);
=
,
,
,
と表す.
四面体OABCは,重力と応力,
,
,
がはたらいて,釣り合っている.そこで,重力の向きを
軸の負の向きとし,四面体の質量を
とすると,
,
,
の各方向についての釣り合いの条件は次のようになる.
![]() |
![]() |
![]() |
|
![]() |
![]() |
![]() |
|
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
|
![]() |
![]() |
![]() |
|
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
(6.1.2) |
![]() |
![]() |
![]() |
(6.1.3) |
物体の変形のしかたも,一般的には物体内で一様とは限らない.物体内の変形を表すために,応力と同様,物体内の各点近くで微小な部分につき,歪みと呼ばれる量を用いる.図6.4のような長さの一様な棒の中に長さ
の微小な部分を考えよう.棒を引っ張ることにより,
が
+
に,
が
+
に伸びたとする.この伸びが棒全体にわたって一様ならば,
=
となる.そこで
として容易に測定できる量を,棒の伸び歪みとして用いている.また,物体中に微小な立方体の部分を想定し,その各面に切断応力
がはたらいた結果,立方体がABCDからA
BCD
のように変形した場合,歪みは
ABA
=
として表され,この歪みをせん断歪み,あるいはずれと呼ぶ.
エレクトロニクス技術を利用した物理量の計測には,物理量を電気信号に変換するセンサーが必要となる.変換方式によりセンサーを大別すると,エネルギー直接変換型センサーとエネルギー間接変換型センサーの二つに分類できる.前者においては,被測定物理量が物理法則にしたがって,直接に電気信号,すなわち電気エネルギーに変換される.たとえば,光起電力効果によるフォトダイオードや熱起電力効果を用いる熱電対温度センサーなどが挙げられるだろう.一方,後者においては,被測定物理量は他の物理量や物性定数の変化に変換された後に,電気信号に変換される.この場合の電気信号のエネルギーは,外部の電源により供給され,被測定対象から直接にはほとんどエネルギーをとらない.一例として,金属の電気抵抗の温度変化を用いた温度センサーがある.
変位,速度,加速度,力,圧力などを電気信号に変換する変換器では,これらの力学量は,機械的な系により測定子の変位に変換され,これがストレインゲージなどによって電気信号に変換される.ストレインゲージとは,細い金属線を引き伸ばすと電気抵抗が増すことを利用して,微小変位(歪み)や力を測定する歪み測定器を指す.ストレインゲージによく用いられるのは,アドバンス線と呼ばれるニッケルと銅の合金線である.ストレインゲージで,特に変位測定用につくられたものはUゲージという商品名で市販されている6.2.ストレインゲージの検出回路はブリッジ回路で,直流または交流駆動型のどちらかが用いられる.