二次元電子系に垂直方向に磁場を加えると、電子は上向きスピンと下向きスピンとで異なるエネルギーを持つようになります。このエネルギー差を磁場の大きさをB、ボーア磁子をμBを用いて

のように表されます。この中の係数g*effを有効g因子と呼びます。二次元電子系ではこの有効g因子が電子間相互作用により変化します。磁場中ではランダウ準位電子占有率νに応じて、上向きスピンと下向きスピンの電子数の差がν奇数において極大になります。そのため、ν奇数において上向きスピンと下向きスピンの電子のエネルギー差が極大となります。

上図に発光スペクトルから測定された有効g因子のν依存性を示します。確かにν=5、7、9の奇数で有効g因子の大きさが極大となっていることがわかります。

上図に交換相互作用によるスピン分裂の増大と不純物散乱を取り入れた理論計算の結果を示します。この結果は測定結果を良く再現していることがわかります。このように電子間相互作用、今の場合、電子間交換相互作用によって発光スペクトルから測定された有効g因子の大きさの増大が説明されます。
[Phys. Rev. B 87, 085318 (2013).]