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静電ポテンシャル

前節では,ナブラ,グラディエント,ダイバージェンスの演算子を扱ったが,今度はローテーションと呼ばれる演算子が登場する.これで電磁気学を学ぶために必要な演算子が揃うことになる.ゴールまであと少しなので,頑張れ!
図 1.13: 静電場の中での電荷の移動
\includegraphics[scale=1, clip]{fig-1-4-1.eps}

1.13に示すように,正電荷$Q$のまわりの空間には静電場$E$($r$)ができる.この電場の中で,正電荷$e$をもつ点電荷を,点A($r$$_{\rm A}$)から,曲線$C$に沿って点B($r$$_{\rm B}$)まで移動させようとすると,$E$($r$)から受ける力$e$$E$($r$)に対して外から仕事$W$をしなければならない.

曲線$C$上の微小ベクトルを$d$$r$と書くと,点電荷を$r$$_{\rm A}$から$r$$_{\rm B}$まで移動させるのに必要な仕事の量$W$は,

$\displaystyle W
=
- e \int_{r_{\rm A}}^{r_{\rm B}} \mbox{\boldmath$E$}(\mbox{\boldmath$r$}) \cdot d\mbox{\boldmath$r$},$     (1.4.56)

となる.

ここで空間内に任意の曲線$C$を考え,この曲線上の電場の曲線$C$曲線に沿う方向の成分の和を考えよう.

図 1.14: 曲線の分割
\includegraphics[scale=0.7, clip]{fig-1-4-2.eps}
1.14のように曲線$C$を微小線分に分割し,その曲線上の$r$$_{i}$における微小ベクトルを$\Delta$$r$$_{i}$とし,その点における電場を$E$($r$$_{i}$)とおく.そして,
$\displaystyle \sum_{{\rm A}}^{{\rm B}} \mbox{\boldmath$E$}(\mbox{\boldmath$r$}_{i}) \cdot \Delta\mbox{\boldmath$r$}_{i}$      

において,曲線の分割を無限に小さくし,$\Delta$ \( \mbox{\boldmath$r$} \)$_{i}$ $\to$ 0の極限をとったものを,
$\displaystyle \int_{C} \mbox{\boldmath$E$}(\mbox{\boldmath$r$}) \cdot d\mbox{\boldmath$r$}$      

と書く.これを曲線$C$に沿う線積分という.
$\displaystyle \mbox{\boldmath$E$}(\mbox{\boldmath$r$})$ $\textstyle =$ $\displaystyle \left ( E_{x}(x, y, z),\ E_{y}(x, y, z),\ E_{z}(x, y, z) \right ),$  
$\displaystyle d\mbox{\boldmath$r$}$ $\textstyle =$ $\displaystyle (dx,\ dy,\ dz),$  

であるから,上式を成分で表せば,
$\displaystyle \int_{C} \{E_{x}(x, y, z)dx + E_{y}(x, y, z)dy + E_{z}(x, y, z)dz\},$     (1.4.57)

となる.$E_{x}$($x$, $y$, $z$),$E_{y}$($x$, $y$, $z$),$E_{z}$($x$, $y$, $z$)は曲線$C$上の電場である.

次節では,この線積分の値と道筋の関係を明らかにするために,ストークスの定理について説明しよう.



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Masashige Onoda 平成18年4月15日